「テクノロジーに興味があります」「成長産業なので将来性を感じました」——ITセールスの志望動機として書いた瞬間に、採用担当者の脳内では「この人は売ることにコミットできる人間ではない」という判断が下ります。1,000人以上の転職支援で見てきた、大手メディアが絶対に書かない本音を話します。
採用担当はその志望動機を聞いた瞬間に「落とす」と決めている
「テクノロジーに興味があります」「成長産業なので」——この言葉の何が問題か
KOTORA・マイナビ・dodaをはじめとする大手転職メディアが推奨するITセールスの志望動機テンプレートがあります。「IT業界の成長性に魅力を感じた」「テクノロジーで社会課題を解決したい」「デジタル化が進む中で自分のスキルを磨きたい」——こうした言葉を「業界研究の証拠になる」として推奨しています。
書き方としては間違っていません。問題は、この切り口が採用担当者が実際に見ているポイントと根本的にズレているという事実です。
「正解っぽい志望動機」を忠実に準備して落ちる構造がここから生まれます。
採用担当の脳内で動いている「本当の判定ロジック」
ITセールスは「テクノロジーに関わる職種」ではありません。「数字を作る営業職」です。
受注件数・売上金額・新規開拓数——これらの数字に毎月責任を持ち、達成できなければ詰められる職種です。顧客に寄り添うことも、ソリューションを提案することも、すべては「受注(クローズ)」のための手段にすぎません。
採用担当者が志望動機から最初に確認していることは一点だけです。「この人は、売ることにコミットできる人間か」。
転職支援の現場で1,000人以上を支援してきた経験から言うと、採用担当者は「業界への興味」を確認したいのではありません。「数字のプレッシャーの中で動き続けられる覚悟があるか」を志望動機の言葉から読み取ろうとしています。
その覚悟が見えない志望動機は、どれだけ論理的に書かれていても、聞いた瞬間に評価が終わります。
どんな言葉が「落とす」と判定されるのか。転職支援の現場で確認してきた4パターンを解剖します。
未経験者がやりがちな「萎える志望動機」4パターン【採用担当の本音】

パターン①「顧客に寄り添いたい・課題を解決したい」
言葉としては悪くありません。問題は「売る」という動詞が一切ないことです。
「御社のITセールスに興味を持ったのは、顧客の課題に向き合い、テクノロジーで解決策を提案できる仕事だからです」——この志望動機を聞いた瞬間、採用担当者の脳内では別の職種の名前が浮かびます。
「この人はCSがやりたいのでは?」
顧客課題の解決を語る志望動機は、カスタマーサクセス(CS)のそれと区別がつきません。CSは既存顧客の定着・活用支援・チャーン防止がミッションです。対してITセールスのミッションは新規顧客の獲得、すなわち「ゼロから受注を取り切ること」です。
採用担当者は「課題解決志向の候補者」を否定しているのではありません。「課題解決『を通じて』数字を作ることへの言及がない」ことを問題にしています。
「顧客の課題を解決する提案ができれば、結果として受注につながる——その循環を自分の手で作りたい」という語り方になっていれば、採用担当者の評価は変わります。「寄り添いたい」だけで止まっている志望動機は、CSとITセールスを混同していると判断されて即終了です。
CSとITセールスの違いについては、こちらで詳しく解説しています。
→ 【採用担当の本音】カスタマーサクセスの志望動機、その言葉で落とされています
「売る」という動詞が志望動機に入っていなければ、ITセールスの面接ではなくCSの面接を受けてください。
パターン②「IT業界は成長しているので将来性を感じました」
これは「業界選びの理由」であり、「なぜITセールスか」の答えになっていません。しかし大手転職メディアは「業界研究をした証拠になる」として、この切り口を推奨しています。
採用担当者の脳内では、この言葉はこう翻訳されます。
「成長している市場に乗っかって、自動的に自分も引き上げてもらえると思っている。厳しい数字を追いかける覚悟がない。市場の波に乗る側ではなく、その波を『営業として自分の足で作りに行く』という発想がゼロ」
ITセールスの仕事は、成長市場の恩恵を受ける側ではありません。成長市場を前線で切り拓く側です。新規開拓の電話は何十件断られても続ける。競合他社との価格・機能比較を毎回勝ち抜く。月末の目標数字に届かないプレッシャーを毎月受け続ける。
「成長産業だから」という理由で入社したいのであれば、その成長の恩恵を享受するのではなく、「その成長を自分の受注数字で作りに行く」という発言に変換できなければ、採用担当者の評価は変わりません。
業界の将来性を語る前に、「私はその業界の中で毎月数字を作り続ける」という文章を一言入れてください。それだけで採用担当者の見る目が変わります。
「成長産業なので」は業界選びの理由です。「なぜ営業として数字を追いかけるか」の理由ではありません。
パターン③「マニュアル通りにミスなく正確に業務を遂行できます」
事務職・管理部門出身者が「真面目さ」「正確さ」のアピールとして多用するパターンです。前職での実績として「ミスゼロ」「マニュアル遵守」を強調してくる。
採用担当者がこれを聞いた瞬間に思うことを正直に話します。「指示待ち人間」という判断です。
ITセールスは「型通りの仕事」ではありません。顧客の状況・予算・社内の意思決定構造・競合の動き——これらは毎回異なります。だから提案の組み立ても毎回変わる。マニュアルが存在したとしても、それは出発点にすぎず、顧客に合わせて組み替え続けることが求められます。
特にSaaSの営業では、製品の組み合わせ提案が必須です。同じプロダクトでも、A社とB社では提案する切り口も、強調する機能も、ROIの見せ方も変わります。「マニュアル通りに動ける」という能力は、この変化対応の文脈では「変化についてこれない」という裏の意味を持ちます。
もう一段深い問題があります。「ミスなく正確に」という言葉が示すのは、リスク回避を最大の価値とする思考パターンです。ITセールスはリスク回避ではなく、受注を取りにいく攻めの職種です。守ることを価値の中心に置いている人間が、攻めを求められる職種に向いているかどうか——採用担当者にはその判断が数秒でできます。
そして最も致命的な問題があります。ITセールスにおいて、顧客から「今は予算がない」「他社と比較中です」「導入の必要性を感じていない」と断られた後の切り返しに、マニュアルは存在しません。その場の顧客の言葉を聞き、どの角度から再提案するか、その場で判断して動く必要があります。「マニュアル通りに動ける」という強みは、この場面では完全に機能しません。
「マニュアル遵守」は事務職の美徳です。ITセールスの面接では「応用の利かない指示待ち」として処理されます。
パターン④「未経験ですが御社でゼロから学んでいきたいです」
転職支援の現場で、ITセールス志望者の志望動機として最も多く見てきたNGパターンがこれです。「未経験歓迎」という求人票の文言を真に受けた典型的な誤解から生まれます。
「御社でゼロから学ばせていただきながら成長したいと考えています」——採用担当者はこの言葉を何と翻訳するか。
「売ることへの覚悟も準備もゼロのまま来た人間」です。
「未経験歓迎」という言葉の意味を正確に理解してください。「ITは未経験OK」であって、「営業が未経験OK」ではありません。ITセールスの未経験歓迎求人が本当に求めているのは、「ITプロダクトの知識はないが、営業としての基礎(数字を追う覚悟・顧客に断られても動き続ける力・論理的な提案ができる経験)は持っている人材」です。
「IT知識がゼロ」は教育でカバーできます。採用担当者が教育できないと思っているのは「売ることへの覚悟がゼロ」の状態です。
転職支援の現場での感覚として、この志望動機で書類を出して落ちた候補者に共通していたのは「準備の証拠がない」ことでした。応募企業のプロダクトを自分で試したか。競合製品と比較したか。どんな顧客にどんな提案ができるかを仮説として持っているか——これらの具体的な行動がない白紙状態での応募は、「教育コストの前に、売る気がない」と即判定されます。
「未経験OK」の求人が本当に求めているものについては、こちらで詳しく解説しています。
→ 【未経験OK】の本当の意味|採用担当が教えない2つの使われ方
「ゼロから学びたい」は熱意ではなく、準備不足と覚悟のなさの証拠として採用担当に読まれます。
4つのパターンに共通する根本的な理由があります。採用担当目線でITセールスという職種の本質を説明します。
なぜその志望動機で落とされるのか——ITセールスという職種の「本当の正体」を採用担当は確認している
ITセールスはサポートでもCSでもない——「ハンター」の職種です

ITセールスとCS(カスタマーサクセス)は、同じIT業界の顧客向け職種でも、求められる人物像が水と油ほど異なります。
CSのミッションは既存顧客の定着・活用促進・解約防止です。顧客との長期的な関係の中で、プロダクトの価値を引き出し続けることが仕事です。「農耕型(ファーマー)」の職種です。
ITセールスのミッションは新規顧客の獲得です。まだ自社と接点のない企業に対してアプローチし、拒絶されながらも関係を構築し、競合と戦いながら受注を勝ち取ることが仕事です。「狩猟型(ハンター)」の職種です。
採用担当者がITセールスの志望動機を聞くとき、「ハンターの動機」があるかどうかを確認しています。「新しい顧客を自分の力で開拓するスリルに惹かれる」「毎月の数字という明確なゴールがある環境で働きたい」「提案が通って受注できた瞬間の達成感を求めている」——こういった「狩猟型の欲求」が見えない志望動機は、ファーマー(CS)向けの志望動機として処理されます。
書類選考の段階から採用担当者が評価軸を持って見ている実態については、こちらで詳しく書いています。
→ 【採用担当者の本音】書類選考は「落とす理由」を探す5秒の作業
「未経験歓迎」求人が本当に意味していること
「ITは未経験OK」という求人票の正しい読み方を知っておいてください。
「IT業界・SaaSプロダクトの知識は入社後に覚えてもらう前提で採用する」という意味です。「営業として数字を追った経験がなくても採用する」という意味ではありません。
未経験歓迎のITセールス求人に応募する際、採用担当者が最低限確認していることは以下の2点です。「前職で何かを『売った』経験があるか」「目標数字に向き合った経験があるか」。
これらがゼロの状態で「ITの知識はありませんがゼロから学びます」という志望動機を出すことは、採用担当者に「なぜ営業でなければいけないのかが分からない」という印象を与えます。
ITセールスを目指す未経験者に本当に求められているのは、「IT知識のキャッチアップ力」と「営業としての基礎と覚悟」の両方です。前者は教育でカバーできます。後者が志望動機から見えない候補者は採用されません。
4つのNGパターンとITセールスの本質が分かったところで、採用担当者が唸った志望動機がどう違うかを説明します。
採用担当が唸った「未経験者の志望動機」——本物はここが違う
評価が上がる志望動機の構造(採用側から見た解剖)
採用担当者が「この候補者は面白い」と評価する未経験者の志望動機には、共通する3つの要素があります。
①「数字を作る覚悟」が言葉に出ている
「受注したい」「目標を達成したい」「インセンティブで稼ぎたい」——こういった直接的な言葉があるかどうかです。CSの志望動機には絶対に出てこない言葉が、ITセールスの面接では評価されます。
②「何を売ってきたか」ではなく「どう売ってきたか」を語れている
前職で営業経験がある場合、プロダクトの種類は関係ありません。「断られた後どう動いたか」「決裁者に届かないとき何をしたか」「競合に負けたときどう学んだか」——営業のプロセスを語れる候補者は、ITセールスでも同じ動き方ができると判断されます。
③「御社のプロダクトで〇〇という課題を持つ顧客に提案できる」という具体的な接続がある
応募企業のプロダクトを自分で試した。どんな業界・どんな課題を持つ企業がターゲットになるかを調べた。自分の前職経験がそのターゲット顧客とどう接続するかを言語化している——この準備の痕跡が見える志望動機は、採用担当者に「入社前にすでに仕事をしている」という印象を与えます。

転職支援の現場で採用担当が唸った発言パターン
転職支援の現場で、採用担当者から「満場一致で通過を出した」というフィードバックが返ってきたケースがあります。
バックオフィス系SaaS(経費精算・労務管理など、競合他社が多くホリゾンタルSaaSの企業への転職でした。候補者はSaaS未経験で、人材業界の法人営業出身です。
採用担当者から返ってきたフィードバックをそのまま紹介します。
「今回の〇〇さん、SaaS未経験でしたが満場一致で通過を出しました。正直、面接官全員が唸りましたね。彼は面接の場で、『御社と競合のA社・B社の無料トライアルを実際に触って比較してきました』と前置きした上で、『御社のプロダクトは高機能な分、ITリテラシーがそこまで高くないターゲット層には初期のハードルが高いと推測しています。だからこそ、私の前職での”泥臭いヒアリングと伴走型の提案営業”の経験を活かし、機能スペックではなく”導入の分かりやすさ”をフックに切り込めば、現在A社に流れている顧客層を確実に切り崩せます』と、自分なりの営業仮説をぶつけてきたんです。単に製品の機能を知っているだけでなく、うちが現在抱えているリアルな営業課題(高機能ゆえの売りづらさ)を的確に突いて、自分の強みでどうやって数字を作るかをシミュレーションできている。未経験でここまで『自ら考えて売るための準備』ができる人材なら、現場に出しても絶対に自走して結果を出してくれると確信しました」
この評価に至ったポイントを解剖します。
やったこと:競合含む3社のプロダクトを実際に無料トライアルで触って比較した。
語ったこと:プロダクトの「強み」ではなく「売りづらさ(高機能ゆえの導入ハードル)」という弱点を正確に指摘した上で、その弱点を自分の強みで補う営業仮説を提示した。
採用担当者に伝わったこと:「この人物は入社前にすでに数字を作るための思考をしている」「SaaS未経験でも、自走して結果を出せる」という確信。
「御社のプロダクトが好きです」でも「テクノロジーで社会貢献したいです」でもありません。「御社のプロダクトのここが売りづらい。だから私の〇〇という経験で、この切り口から切り込めば数字が作れる」——この一言が採用担当者の全員を動かしました。
採用担当者が唸る志望動機は「自分が動いた事実」と「数字を作る仮説」の2点が揃っているものです。
まとめ
ITセールスの志望動機で落とされる理由は「熱意が足りない」からではありません。ITセールスが「数字を作るハンターの職種」であることを理解していないまま、「学びたい」「寄り添いたい」「成長したい」という言葉を使うからです。今日やることは1つ。応募企業のプロダクトを自分で試し、どんな顧客にどんな提案ができるかを仮説として作り、「私はこのプロダクトでこの顧客から受注を取りに行く」という一文を志望動機に入れてください。それが通過する志望動機の唯一の作り方です。

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